Antibalas

前作『Who is This America?』は聴いたけれど、前評判どおり「Fela Kutiだな」と思っただけで、特に繰返し聴くような事をしなかった。新作『Security』も輸入盤が店頭に並んだ頃には手にしていたけれど、最近まで耳にしていなくて、危うく購入した事すら忘れるところだった。

全体的にはこれもアフロビートだと言えると思う。そして、Antibalas自身がFelaのコピーである事を目的としているので、Felaに似ているか否かという部分も注目なのだけど、そういう意味では、やはり似て異なるもので、Felaは楽曲が10分を超えるものが多いけれど、Antibalasは短いものが多いせいか、グルーヴという点においてFelaに及んでいないと思う。歌声のコール&レスポンスという点もFelaの作ったもののそれとは違い、コール&レスポンスがあったかどうかも印象に残らない。別にこれは否定的に言っているのではなく、そういう違いは感じるというだけの話。

楽曲的に言えば、1曲目の「Beaten Metal」にはプログレッシヴな感じがあり、ホーン・セクションの鳴りはクラのオケを思い出せるし、なんとなくだけど、Battlesっぽい感じでもある。続く「Filibuster X」は如何にもアフロビートだけど、サックスのソロが乗り一発なFelaに比べて聴き応えがあり、音楽的には面白い。「Sanctuary」はまるでレゲエでも始まるかと思わせるギターのカッティングが印象的。これは個人的にはアフロビートというイメージではない。「Hilo」はジャジーなアフロビートといった趣。「War Hero」も如何にもアフロビートだけど、楽曲が短いのがもったいない。「I.C.E.」もレゲエを思わせるベースラインが中盤まで続くけれど、転換があり、これもプログレな印象。終曲「Age」は、かなりゆっくりめのテンポ。微妙なグルーヴだけど、腰にくる感じはヒップホップ好きに受け入れられそう。









Antibalas 『Security』




Fela Kutiというと、やはり闘うミュージシャンというイメージが強い。それについて知らない人はWikipediaでも参照して欲しいのだけど、Victor JaraやFelaのような人には、やはり敬意というものを抱いてしまう。最近特にそう思うことが多くなった。それというのも、例えば音楽を聴く行為に意味は無いとか、ただの趣味なのだからそこから何かを得る事もつもりもないというようなことを見たり耳にしたりする事が増えたからで、その考え自体はその人のものなのでいいのだけど、そういうものを目にするたび、オレは少なくてもそうじゃないと再認識している。オレが中学なガキの頃、Band Aidの「Do They Know it's Christmas」やUSA for Africaの「We are the World」等を聴いて、素直にその行為に感動したりしたし、さらにAUAAの「Sun City」は、内容的にも音楽的にも面子的にも前者らを軽く凌ぐ内容で(半端ない面子 / マジで半端ない面子)、ここで具体的にアパルトヘイトというこのを知り、それを嫌悪するという感情を持った。もちろんその後もいろんな音楽から得るものがあったと思うし、多分今後もあると思う。オレはそういう風だから、自分と違う考えのものを多く見ると「ふうん」と思ってしまうのだけど、もう大分前の尾崎豊の時とか今のZardの件とか、そこで悲しんでいる人たちというのは、少なくてもオレの様にその音楽から何かを得たという気持ちがあるのだろう、と、思う。そういう人達とオレの趣向は違っていても、音楽を聴くという行為に斜めに思える姿勢のヤツや、妙にオゲージュツな方向に持って行きたがる輩なんかより、同じ目線で音楽に触れていると思う。というか、そっち側にいたいと思う今日この頃。