カヒミ・カリィ

カヒミも久し振り。昨年のONJO以来だから一年は経ってるか。というか、カヒミ冠のライブというものを見るのは今回が初めて。フレンチ・ポップな頃はさすがに行きにくかったのだけど、今の路線なら客層も一方に偏っている事は無いだろう(でもオレが行くライブにしては珍しくというか、多分初めて女性の方が観客の多そうなライブだったけど)。会場は昭和女子大学人見記念講堂。ここもDavid Sylvian以来。そのSylvianのライブに行った時に昭和女子大学に行くという話しをしたら、とある人に「あやしい・・・」といわれた事があった。何があやしいのかよくわからない。まあとにかく、そこはウチからも歩いていける範疇なので、今住んでいるところはそういう意味では恵まれている。などと考えながら会場に向かった。

今回のライブ、やはり面子が凄い。大友良英とJim O'Rourkeがギター&ベースを担当し、ドラム&パーカッションに外山明、笙の石川高、チェロの四家卯大、サイン波のSachiko M、そしてロンドンからハープのRhodri Daviesを呼び、さらにミキサーはZAKと、どう考えてもいい音楽が聴こえる事は確定済み。で、予想通り特別な音色が飽和する。ZAKサウンドと言うべきなのか、ベース音が空間を支配しないという状態は、当然のように音に隙間がある。その隙間をかすかに埋めるさっちゃんのサイン波。そうそう聴く事の出来ない笙とハープとチェロの音色は、サイン波よりも非現実的。そして、その代名詞のような危険な演奏を差し控えて、あくまでも決められたとおりに音を作り上げる事に徹する大友とO'Rourke。外山も、らしいビートを使える場面は少なく、ドラムセットを全然使わない事も多い。さらに、カヒミが「All is Splashig Now」でサンプリングで水の音を使いたくないという申し出があったとの事で、なんと外山は水を演奏・・・、北海道ではTerje Isungsetが氷のドラム&パーカッションを披露したようだけど、さすがは外山、負けていない。いや、勝ってるな、これは。

そしてそれらを自身の名の下に集めたカヒミの声。練習しても貰うことの出来ないあの声を持っている時点で特別なのに、音楽的に刺激を求めて動いてしまった彼女の現在地は、まったく対照的な歌を扱うBjorkeに並んで、前に出てしまったと思う。




本編最後の「You are Here for a Light」は、ライティングの演出も含めて昨夜のクライマックス。テレビカメラが入っていたので、恐らくNHK辺りで昨夜のライブは放送されると思う。テレビでどれぐらい伝わるかわからないけれど、お見逃しの無いように。



ちなみにRhodri Daviesというハープ奏者、会場で名前を聞いたときはピンとこなかったけれど、調べてみるとBaileyとの共演歴もあるし、John Butcherと来日までしていた。当然の様に手持ちのCDに名前がある・・・。ただひたすら聴いてみるだけじゃなく、ちゃんとデータ的なことも頭に入れておこうと、反省する羽目になった。



カヒミがあえて称えなくてもわかる人にはわかることなのだけど、あの音を作り上げたのは大友とO'Rourkeの二人。特別な才能を持った二人が作り上げた音は、ちょっと他では聴いた事の無いものだった。それにZAKが大きく関与していると思ったのだけど、それは音の感触が浜田真理子の『夜も昼も』の冒頭の「十五夜」に酷似しているからで、あのアルバムであの音を選んだ理由が昨夜わかった気がした。音の伝え方一つで、音楽の行くところも変わってくると思った。

京都公演では残念ながら石川が不参加という事らしいけど、そのマイナス1を補う為の努力を大友とO'Rourkeはしてくるはずなので、京都公演に行く人は期待していいと思う。

そういえばカヒミがMCで「静か過ぎて少し怖い」みたいな事を言ってたのだけど、確かに少し観客の反応は悪かったかもしれない。あの心地良い音でまどろみ状態になった人もいると思うけれど、拍手とかそういう音を抜きにして、あの音を聴き続けたいと言う気持ちにさせたという事もあると思う。少なくてもオレはそう思った。だから一つだけ注文をつけるとすると、曲間をなくして二部構成だったら完璧だったと思う。でも、大友とO'Rourkeが曲毎に楽器の持ち換えをやっていたので、事実上無理な話か。