Mats Eilertsen

立て続けにノルウェー〜北欧系の現代ジャズのインプレを書いて、昨年末辺りからこの手の音をよく聴いている事に気付いた。で、昨年の自分のブログのバックアップを見て、Mats Eilertsenの『Flux』のインプレを書き忘れていた事に気付き、今の流れのままに久々に聴いてみた。

『Flux』は『Turanga』に続くEilertsenの自己名義の2ndアルバム。二作とも同じ面子なので、実質的にはEilertsenカルテットの作品という言い方も出来るはず。このカルテットの最大の特徴は、リーダーのEilertsenがベーシストであるにもかかわらずチェロ奏者のErnst Reijsegerが加わっている事に尽きる。このReijsegerという人はフリー・インプロヴィゼーションフリー・ジャズ畑のミュージシャンで、他のメンバーよりも上の世代。Baileyとの共演やICPオケなどにも属していたその履歴は、このカルテットが北欧ジャズ系のユニットにおいて、個性を放つ部分に大きく貢献している。

このユニットの最大の聴き所は、やはりReijsegerのアドリブ。ともすれば雰囲気に流されてしまいそうな北欧系のジャズにおいて、同一色を身に纏いながら違う色に見せる様な音の連続は、スリリングという言葉以外にあてはめる事は難しい。管楽器のFredrik Ljungkvisは、このユニットにおける自身の役割を確認しているかのような、多弁ではない知性的なソロを聴かせ、ドラムのPer Oddvar Johansenは、手数は多くても不思議とうるさく感じさせない叩きを聴かせる。そしてリーダーのEilertsenは、ReijsegerやLjungkvisを耳で追っていると存在を忘れてしまいそうになるけれど、一歩引いて全体を聴いてみると、全体を包み込む様に音を出している事がわかる。









Mats Eilertsen 『Flux』




こうやって北欧系の現代ジャズを聴いていて気付いたのは、Lars Danielsson、Ingebrigt Haker Flaten、Mats Eilertsen、Per Zanussiと、ベーシストにキーパーソンといえる存在が揃っている。名前の並びは多分年齢的にこの順序だろうと思って並べてみたのだけど、LarsからPerまでを一つの流れで見れば一時代を作っていると思うし、この四人を注視する事で、北欧ジャズの優れた演奏を逃す事は無いかもしれない。