Elliott Sharp

「Elliott Sharp Japan Tour 2005」という事で、今日(12/11)は新宿ピットインに行って来た。E#(Elliott Sharp)は、Thurston Mooreが参加したWilliam Hookerのアルバム『Shamballa』(2セッション、三曲入り)の一曲でその音を聴いて、それ以来特に集中して聴いているわけではないけれど、時々そのアルバムを購入している。今年は臼井康浩とのセッション『Volcanic Island』と、田村夏樹、藤井郷子、加藤崇之とのセッション『In the Tank』が出ていて、それがなかなか良かったので、タイミングのいい来日。見逃すわけにはいかない(またか・・・)。



客の入りはまあまあ。70人前後ってとこだったと思う。ピットインに着いたときは三人ぐらいしかピットインの前にいなくて、「さすがにマズイだろ」と思ったのだけど、これぐらいいればホッとできる(何でオレが?)。今日のライブは『Volcanic Island』と『In the Tank』の発売記念という名目も兼ねていて、1stセットはE#のソロと臼井康浩とのデュオ。まずはE#のソロが始まる。

E#というギタリストは、元々はかなり大きな音でノイジーな音を撒き散らすイメージが強かったのだけど、ここ数年のアルバムは色んなスタイルを見せていて、このソロでも、タッピングをかなり使った演奏を行う。そのタッピングがかなり精度が高く、まるで打ち込みを聴いているような錯覚をしてしまう。適度な緊張感があって、初っ端から惹き込まれる。十五分ほどソロをやった後、今度は臼井康浩とのデュオ。臼井康浩は個人的に注目のギタリストで、11/28のRaymond MacDonaldのセッションでもその演奏を耳にすることは出来たけど、存分にそのスキルを発揮した演奏には思えず、もう一度その演奏を生で接する機会を楽しみにしていた。このデュオは、完全即興なのか構成があるのかわからないけど、お互いを挑発するというより、お互いの音に反応しあって、音を作り上げていくように進んでいく。E#はPBをエフェクトのコントロールか何かで使っているけど、臼井は足元に二つのペダルがあるだけ。なので音色の豊富さはE#の方が当然多いのだけど、臼井のギターはそれを補って余りあるほどの音を聴かせる。アグレッシヴと言う意味では、E#よりも臼井の音の方がアグレッシヴ度の高い音を披露していた。このデュオは恐らく40分ほどの演奏だったと思うけど、緩い瞬間が見当たらず、高いレベルの緊張感を持った演奏が聴けた。

ちょっと長めの休憩を挟んでの2ndは、『In the Tank』のメンバー(E# / 田村夏樹 / 藤井郷子 / 加藤崇之)によるセッション。加藤崇之も気になるギタリストで、こちらもRaymond MacDonaldとのセッションで演奏を聴いたのだけど、臼井とは違ってそこである程度その個性を発揮していた。だから今回は、特に加藤中心に聴くという事はしなかった。ドラムとベースのいない状態での四人でのセッションという事で、ヘタをするとひたすら音の咆哮になってしまう可能性もあったと思うけど、ある程度の構成はあったと思う。だから危惧したような方向には進まず、50分ほど(多分それぐらいだったと思う)の長い演奏も短く感じた。加藤崇之がかなりエフェクトの類や、オカズのような音を使うタイプなので、E#は結構ベース音を使った演奏を行う。それと、アンプを殺したような状態でギターを弾いたりして、バランスに気を使った演奏が多かったと思う。田村夏樹はフリーキーな音を使わずしっかりとした音を聴かせていて、E#と加藤が音を敷き詰めるような状態にすると、その中心に田村の音が入ってきて、全体を抑制するかのように感じた。そして藤井郷子は、結構強い音も使って、ピアノ特有の叩きつける音を存分に聴かせてくれた。

本編終了後田村夏樹が、「時間もいい感じだよね?」と言って、今日のライブは終わり、と言いたそうなそぶり(なんか前にもこういう光景見たな)。でも、E#が臼井康浩を交えて五人でセッションしたいと言ったらしく、結局「十分だけ(田村&加藤)」ということで、オマケのセッションが始まる。これは完全即興で、短い時間という事もあってかなり激しい。それでも、音を減らして藤井郷子のピアノを浮かび上がらせたりするところなんかは、さすがだと思った。

ちなみにオマケのセッションで田村夏樹はラッパを吹かず、トイ楽器みたいなのを終始振っていた・・・。まあ、管楽器は一番体力消耗するだろうと思うので、仕方ない。




個人的には凄い演奏を聴いたと思う。セッションする事、インプロする事、(作曲された)曲をやらないという事で音楽を聴かせるという事は、本当に凄いという事がよくわかるライブだった。