Wilco

前作『A Ghost is Born』発表後、Nels Clineが加入したWilcoの新作『Kicking Television』は、今年シカゴで録音されたライブ。

これはNels Clineが加わってから初の公式音源じゃないだろうか(『A Ghost is Born』のオーストラリア盤かなんかのボーナスに入っていたライブがNels Cline入りかもしれないけど)。さすがのNels Clineもバンドのメンバーとしての参加なので、自身のリーダー・アルバムの様にやりたい放題ではなく、適度に抑えた演奏。だけれど、抑えた中にも現代最強のギタリストの一人としての真価は発揮されている。



Wilcoというバンドはカントリー・ロックという事で、元々は殆ど興味の対象外だった。ところが『Yankee Hotel Foxtrot』が発売になった時、そのアルバム発表までの紆余曲折に男気、というよりミュージシャン・シップを感じて、ただそれだけの理由でアルバムを購入。でもこれが大当たりで、カテゴリーに惑わされてしまっていた自分自身の目の悪さを後悔した。ちなみに『Yankee Hotel Foxtrot』発表に至るまでの紆余曲折というのは、このアルバムを作ったWilcoが、当時所属していたレーベルにそのアルバムの発表を拒まれる。この出来事に憤慨したWilcoは、レーベルとの契約を解除して、アルバムを丸ごとネット上で公開してしまう。それを聴いたNonesuchレーベルが、そのアルバムをNonesuchから発表したという事(かなり曖昧な記憶)。結果的に『Yankee Hotel Foxtrot』は、それまでのWilcoのアルバムで最も売れたアルバムになったというオチまで付いている。




肝心の『Kicking Television』は約二時間の演奏が収められていて、思いっきりWilcoの音に浸かる事が出来る。Nels Clineのギターが炸裂するところもカッコいいけど、一番耳につくのは、楽曲の良さ。どの曲もシングル並みのわかりやすさがあって、すぐに耳に馴染む。このバンドのライブ、凄く楽しいんだろうなあ。今度来日公演があったら、見逃さないようにしなければ。