Salif Keita

あんまりアフリカ等の第三世界(この言葉に問題があるのはわかってるけど)の音楽に数多く接している訳ではない。だけどYoussou N'DourやSalif Keitaの音だけはなるべく追い続けてきた。そのSalif Keitaの新作『M'Bemba』は、彼の代表作になると早くも言われている。前作の『Mofu』の延長線上にある『M'Bemba』は、それと同様にアコースティックな響きを重視したもので、この路線を深めたことが、その評価につながっているのだと思う。

Salif Keitaの最大の魅力は、やはりその声、深みとアフリカらしい高みのある声で、その声を生かせるかどうかが、彼の音楽の出来を左右する。



1曲目の「Bobo」はミドルテンポで、アップテンポの曲を持ってこないところに風格と余裕を感じる。2曲目の「Laban」もミドルテンポで始まりながら、終盤は若干テンポが上がり、続く「Calculer」はアフリカらしいアップテンポな曲で、ここから押して行くのかと思ったら、続く「Dery」はラテン風味の哀愁漂うギターとの絡み。続けてゲストのBuju Bantonとの声質の違いが楽しい「Ladji」、疾走感のある「Kamoukie」と「Yambo」。そして「Tu Vas Me Manquer」とタイトルトラック「M'Bemba」は、ゆったりとしたリズムの中で歌われる。特に「M'Bemba」は絶品で、三線を思わせるような音や、ベースの様で違う音のソロ、二音か三音で時折聴こえてくる弦楽器をはじくような音など、効果的な音が溢れている。終曲「Moriba」では、序盤ギターのみのバッキングに、コーラスとSalif Keitaの歌が響く。中盤以降少しずつ楽器が加わるけど、どの音も静かな自己主張にとどまっていて、最後まで静寂の中の微かな熱を感じる。